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Echeveria agavoides ‘Ebony’(エケベリア・アガボイデス ‘エボニー’)について
― むらさき園からの発信
学名と分類の背景
本来の学名は Echeveria agavoides Lem.(エケベリア・アガボイデス)。この原種はメキシコ各地に広く分布し、硬く鋭い葉を持ち、アガベに似た姿から「agavoides=アガベに似た」という種小名が与えられています。
その中から特に園芸的に注目される選抜株や園芸品種が数多く生み出されてきました。
そのひとつが ‘Ebony’(エボニー) で、葉の先端や縁に深いワインレッド〜黒紫の発色を示すのが特徴です。
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「Evony」「Santa Barbara」とは?
インターネット上や市場では、しばしば 「Evony」 という名前や 「Ebony Santa Barbara」 といった呼び名が見られます。
しかし、これらは正式な学術的記載に基づく品種名ではなく、流通上の便宜的な呼称と考えられます。
Evony:おそらく‘Ebony’の綴り違い、あるいは誤記から広まったもの。
Santa Barbara:カリフォルニア州サンタバーバラ近郊のナーセリーや流通経路に由来する名前と推測されます。
つまり、いずれも園芸的な愛称であって、正式な植物学的な品種名ではないことに注意が必要です。
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園芸的特徴
‘Ebony’は、強光と寒暖差のある環境で最も美しく発色します。
葉は肉厚でロゼットを形成し、通常のアガボイデスよりも縁取りが濃く、条件次第で真紅から黒紫に近い色まで見せてくれます。
成長速度:比較的ゆっくり。
株の姿:直立性の強い葉で、整ったロゼットを作る。
紅葉:冬や初春の低温期にもっとも色が深くなる。
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むらさき園からの栽培メモ
私自身もエボニーに魅了され、さまざまな株を栽培しています。
特に感じるのは、「株が充実していないうちは発色が浅い」という点です。小さい株のうちは緑が強く出ますが、十分に育ててから強光に当てると、葉先から縁にかけて見事な赤黒いグラデーションが現れます。
また、容易に結実する印象です。そのため、交配に使う場合は自家受粉に注意した方が良さそうです。花粉の状態や受粉のタイミングに注意する必要があります。
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まとめ
正式名:Echeveria agavoides Lem. の園芸選抜 ‘Ebony’。
流通名:「Evony」「Santa Barbara」などは非公式な通称。
特徴:縁取りが深紅〜黒紫に染まる美しいタイプ。
注意点:紅葉は株の充実と強光・寒暖差が必要。
むらさき園視点:まず株を大きく育て、充実させてから発色や交配を楽しむのがおすすめ。
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参考文献
Walther, E. (1972). Echeveria. University of California Publications in Botany.
International Crassulaceae Network (ICN). Echeveria agavoides 種ページ.
San Marcos Growers (California). Plant description of Echeveria agavoides ‘Ebony’.