多肉植物の考察

時代を超えて愛されるエケベリア七福神とセクンダの物語

エケベリアには数え切れないほどの品種があります。
その中でも、何十年という時を超えて今なお多くの人に愛され続けている存在があります。

それが七福神です。

近年は色鮮やかな交配種が次々と誕生し、目を奪われる新品種も数多く登場しています。しかし、その華やかな世界の中でも、七福神には流行だけでは語れない魅力があります。

そして七福神を語る上で欠かせない名前が、セクンダです。七福神とセクンダは同じ植物なのでしょうか。
今回は、その歴史や魅しさ、そして時代を超えて受け継がれてきた物語をご紹介します。

七福神が愛され続ける理由

七福神を初めて見たとき、多くの人は派手さがないなと感じるかもしれません。しかし、育てるほどにその見方は変わります。

整ったロゼット、やわらかな青白い葉色、季節によってほんのり赤く染まる葉先。
派手さではなく、完成された美しさがそこにはあります。

何年育てても飽きることがなく、親株になるほど存在感を増していく姿は、多くの愛好家を魅了してきました。

セクンダという原種

七福神を調べていると、必ずと言っていいほど目にする名前がセクンダ(Echeveria secunda)です。

セクンダは古くから知られているエケベリアの一種で、整ったロゼットを形成し、群生しやすい性質を持っています。

長い年月の中で世界各地へ渡り、園芸植物として育てられてきました。

現在でも世界には「secunda」の名前で流通する株が数多く存在します。

産地別のセクンダ

「セクンダ」という名前は古くから使われているエケベリアの学名ですが、現在では世界中にさまざまな産地由来のセクンダが存在しています。

見た目が似ていて、それぞれに個性があります。

  • セクンダ・グラウカ
  • セクンダ・プエブラ
  • セクンダ・ハウハル由来の実生株
  • セクンダ・エルチコ

これらを実際に育ててみると、どれも七福神を思わせる雰囲気を持っています。

特にハウハル産の種子から育てられたセクンダの中には、七福神によく似たロゼットを形成する個体も見られ、「七福神とのつながり」を感じさせるものがあります。

もちろん、すべてが七福神そのものというわけではありません。
しかし、それぞれを見比べていくと、七福神がセクンダという原種グループに位置付けられてきた理由が少しずつ見えてきます。

七福神とセクンダは同じ植物なのか

この問い答えられえる文献を探しましたが明確な答えはありませんでした。
しかし日本で長年「七福神」として親しまれてきた株と、海外で「Echeveria secunda」として流通している株には、多くの共通点があります。

一方七福神には、選抜や増殖の過程によって姿に違いが生まれているかもしれない株も存在します。


そのため、「七福神=セクンダ」と単純に言い切ることも、「七福神とセクンダはまったく別の植物」と断言することも難しいのが現状です。

だからこそ、海外の産地違いのセクンダを育てて比較することは、とても興味深い楽しみのひとつになっているのです。

日本に残る七福神の古い記録を辿って

日本で確認できる七福神の古い記録をたどっていくと、一つのホームページにたどり着きました。

平尾博さんが公開されていた**「Web サボテン今昔」**です。

現在のようなブログやSNSが普及する以前、ホームページビルダーを使って一つひとつ丁寧に作り上げられたことが伝わってくる、とても温かみのあるサイトでした。古い資料や写真、当時の貴重な情報が数多くまとめられており、日本の多肉植物史を知るうえで大変貴重な存在です。

その中には、七福神についても興味深い記述が残されています。

以下、「Web サボテン今昔」より引用します。

「エケベリアがエケベリアとして記録に登場するのは“趣味の仙人掌栽培”(実際園芸増刊号1930・1931)で、同書の松沢進之助さんの記述が最初ではなかろうか。“エチベリア この属のものは俗にレンゲと云われるものであります。…あまり普及は致しておりませんが、鉢植にして書斎の一隅に置くなり、又繁殖は強いものですから、越冬さへ合理的に行けば美観を呈するもので一寸面白いものです。”として、錦司晃、月影、養老、陽明、松緑、金晃星、和唐内、七福神、祝ひの松、龍田鳳、軍旗の名を挙げている。

私が調査した範囲では、この記述が七福神という名称を確認できる日本最古級の資料ではないかと考えています。

1930~1931年の『趣味の仙人掌栽培』に「七福神」の名が登場していることは、日本において七福神が少なくとも昭和初期には園芸植物として認識され、栽培されていたことを示す貴重な手がかりです。

現在では七福神とセクンダの関係についてさまざまな議論がありますが、このような古い記録をたどることで、七福神が日本の園芸史の中で長く愛され、受け継がれてきた植物であることが改めて感じられます。

産地が違えば表情も変わる

原種の魅力は、産地によって姿が変わることです。

同じセクンダでも、グラウカにはグラウカらしい姿があり、プエブラにはプエブラらしい個性があり、ハウハル由来にはまた違った雰囲気があります。

その中に、七福神を思わせる特徴を見つけた瞬間は、原種を育てる楽しさそのものです。植物は図鑑や文献だけでは分かりません。実際に育て、比較し、長い時間を共にすることで、新たな発見がある場合もあります。

時代を超えて残る美しさ

園芸の流行は移り変わります。

しかし、七福神は何十年という年月を経てもなお、多くの人に育てられています。それは単に丈夫だからではありません。
見れば見るほど美しく、育てるほど味わいが増し、増えれば増えるほど見応えが出る。

そんな「植物としての完成度」が、多くの人を惹きつけ続けているのでしょう。

むらさき園から

私は海外文献を調べるだけでなく、実際にセクンダ・グラウカ、セクンダ・プエブラ、そしてハウハル産の種子から育ったセクンダセクンダ・エルチコなどの多くの産地のセクンダを育てています。

それぞれに違いはありますが、共通して感じるのは「七福神に通じる美しさ」です。

こうした植物を並べて育てていると、七福神は突然生まれた特別な存在ではなく、セクンダという原種の歴史の中から受け継がれてきた、美しい系譜のひとつなのではないか そんな思いが自然と湧いてきます。

植物には、名前だけでは語れない歴史があります。

七福神とセクンダもまた、その長い物語を今に伝えてくれる、美しいエケベリアなのです。

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